動かない相手を礼の力で動かす方法

1994年のことだったか

仕事で調査報告書をつくる必要があり、知り合いのロンドン在住の長いインド人にお願いして、いいコンサルタントを紹介してもらった。

そのコンサルタントは、アメリカのワシントンDCに住んでおられる方で、すでに公務は引退しておられるのだが、国際学会の会長もつとめられた立派な方だった。

その方に、時給100ドル、調査取材の旅費つきで、全部で10万円程度の小さな仕事を頼むことになったのだが、仕事をしてくれているのかどうか、途中からメールを送っても返事が来なくなって、僕の頼み方に失礼でもあったのかと、悩むことになった。


いったい、どうしたらその偉い人に、こちらの思ったとおりの仕事をしてもらえるのか。仕事をしてくれさえすれば、おそらくいい仕事になることは明らかだから、仕事をしてくれていることの確認を、相手に失礼がない形でとるにはどうすればいいかと悩んだ。


で、思いついたのは、コンサルタントを紹介してくれたロンドンに住んでいるインド人を、紹介してくれたことをお礼を言うためだけにランチに招待して、さらに当時三越ロンドン支店があったので、和菓子の詰め合わせを手土産にして差し上げたのだった。

これが効いた(ようだ)。

おそらくインド人は、気分がよくなったから、アメリカ人の友人に、「どうかね、仕事のほうはちゃんとやってくれているよね」てな感じの連絡を取ったのではないだろうか。

それで十分なのだ。


それからすぐに、アメリカ人から、作業の手順について報告がきた。いつどこに出かけて、誰と話をしてくるから、報告書の仕上がりはいつくらいになる、という連絡が。


これだけでもう大船に乗った気分になれました。


大事なことは、常に前向き、ポジティブに考えて行動すること。

誰かを疑うのではなく、誰かにポジティブな気持ちをぶつける
(「ちゃんと仕事してるでしょうね」という聞き方はやっぱり失礼だから、できない。してはいけない)

それには、お礼がいい。
ありがとう。あなたのスバラシイ人脈にお世話になりました。
あなたの紹介してくれたコンサルタント、すごく立派な方ですね。感動しました。
紹介してくださったおかげで、安心できました。
本当にありがとうございました。

食事に招待。そして手土産。高いものでなくていい。ちょっとしたことに気持ちをこめる。


これがもっとも有効であると確認したのだった。