民主と愛国

この本の中で、ナショナリズムとは、国家や民族に関する言及すべてをさす。しかしそれでは議論はふかまらない。

私は、以下の定義を提案した。

ナショナリズムという概念は、ネイションというひとつの単語が、国家、民族、国民を表現するというトリッキーなところに注目してとらえるべきだ。すなわり、国家という統治機構と、民族という人間集団が、国民という概念によってひとつの運命共同体として認識されるように仕向け、近代国民国家の総力戦を実行するための思想が、ナショナリズムであるのだ。

そのように考えると、さまざまなナショナリズムが問題としていることの比較が容易になる。

結局、「民主と愛国」を読んでわかったのは、日本の戦後の民主主義思想で、国家を民主的に運営することを考えていたのは、終戦直後の人々だけだった。丸山真男がその代表。当時の「総力戦の延長」として民主主義を考えていた。

天皇がまったく責任をとらずに、おめおめと象徴になった(もちろんこれはアメリカの差し金でもあったが)後は、国家は封印されてしまい、ナショナリズムが国家統治メカニズムと無縁な存在になった。

誰も気づかなかったが、それ以降の日本はまさにアメリカの属国であったのだ。60年たっても、いまだにそれが国民の認識にないところが、アメリカの巧妙さといえる。